サラリーマンと事業承継

サラリーマンと事業承継

たいていの中小企業の社長は、子どもたちがより就職に有利な高学歴を手に入れられることを望み、大企業のような優良企業に就職させたいと思うという話。昭和の時代によく聞きました。
21世紀に入ると、企業の面接に親が同伴するという極端なケースもあるうようです。そのような独特な親の励ましを受けるケースもあるようですが、手塩にかけて育てた子どもたちは、それぞれ就職をしていきます。

しかし、最近のサラリーマンをめぐって、労働環境などに変化が起きています。
副業をOKにする会社。「働き方改革」というちょっとポジティブなキーワード。イノベーションによる効率化などなど・・・。
これらは、一見、サラリーマンの労働環境も「規制緩和」されるような印象かもしれません。
でも、これらの言葉を聞いて、ふと思います。働き盛りのサラリーマンは受難の時代に入るのかもしれないと。その兆しだとしたら、どうでしょう。

社長「皆聞いてくれ!会社もいろいろ考えたけど、サラリーマンとしての収入はこれ以上保障してあげられないから、副業してもいいよ」とか
サラリーマン「働き方改革のおかげで、今まで残業代で確保していた収入が見込めなくなったから、そろそろ転職でもするかな」とか
社長「当社もAIなるものを導入したから、省人力化を進める準備をしないと… 」とか

ここで挙げたセリフは、今はまだ現実味はないかもしれません。
でも、近いうちに押し寄せる可能性の高い現実。

このような状況をあえて書いたのは、社長であるあなたのお子さんが「安定のサラリーマン」をしているうちに、一度、あなたの仕事の棚卸しを家族でしてみるとよいかと思ったからです。
サラリーマンが中小企業を買収する時代。ならば、社長のあなたが、身近なサラリーマンであるお子さんに率直な話をすることで、あなたの抱えている悩みや課題を違った視点での示唆を見い出せることがあるかもしれません。また、お子さんは、一生、今の企業で働く時代ではなくなっていると微かに気づいて、気づいてしまった自分に、戸惑っているかもしれません。

これも、ちょっとしたタイミングです。逃すのはもったいない。
例えば、1年前だったら、お互い話にもならないという状況だったのに、今年に入ってから話したら、「実は、一度事業承継の話をしてみたいと思っていた」という返事が返ってくる可能性があるのです。この流れは、親族での事業承継を改めて考えるきっかけになると思うのです。親族間は、単なる事業承継だけではなく、相続の話も一緒に計画的に進めることができます。

実際、親族外での事業承継の説明会では、事業承継と相続という入り組んだ問題を考えるためのヒントは、なかなか見い出せません。
まず、親族で方向性を出すことが大切です。何のために事業承継をするのかを考える時間なのです。そこがブレない核を持てれば、専門家に相談した時に、盲目的に専門家の話に傾倒するのではなく、自分に必要な専門家を見つけていくという自主的な動きに変わっていきます。決して簡単ではありませんが。
あなたの事業承継は、国のためですか?あなたのためですか?