2021年コロナ禍を乗り越えていく

2020年は、どの業種の企業にとっても、新型コロナの影響があったかと思います。

私の事業承継においても、例外ではなく、厳しい一年になりました。
皆さんは、いいかがでしたか。
私は、計画していたことの7割が変更を余儀なくされました。
入念に準備を重ねてきていただけに悔やまれます。

そんな失意の中、緊急借入への国の対応や持続化給付金など、
今までになく国のサポートが充実していたと感じた1年でした。
もちろん、従業員などの休業手当など、既存の仕組みを流用しようとしすぎて、
スムーズにいっていないものもあります。
そして、まだコロナ禍は絶賛継続中であります。

リーマンショックによる不況のときを考えると、
今回のような中小企業が生き残るために選択できる
公的なサポートは少なかったと記憶しています。

ほぼこの1年、忙殺されてコンテンツをアップできなかったのですが、
事業承継のお話も、続けてお知らせしたいと思いますし、
コロナにまつわる資金調達のお話や補助金などのお話もアップしていきたいと思います。

コロナ禍でM&Aは増えているという数字もあります。
経営者が後悔をしないM&A、大切なことですよね。

セミナーも少しずつ、再開していきたいと思います。
皆さんの事業承継や経営戦略にお役に立てるお話、
できる限りわかりやすくお伝えできればと思います。

まるっと解決!

大手企業の事業承継支援のカタチ

このところ、事業承継をサポートするための金融機関同士での提携の話が増えています。
サポートの体制が整いつつあることは、私たち事業承継の当事者にとって、いいニュースであってほしいと思います。

今回、バトンタッチドットビズで取り上げるのは、大手企業が得意先や仕入れ先の中小企業向けの事業承継支援を独立系ファンドと提携し、 特別目的会社を活用していこうという記事をご紹介します。
この方法を導入するのは、一部上場企業である株式会社山善(以下、山善と表記)です。持続的成長の一つとして打ち出した取り組みです。主なポイントは下記のとおりです。

「経営者が70代半ば過ぎや、子息が入社していないパターンなどがある。オーナー企業が多く、次期の経営者が育っていないこともある」(山善の高津雅彦営業企画部部長)。


山善は事業承継支援に当たり、約3カ月間にわたり、相手企業の従業員に徹底的なヒアリングを実施。課題を抽出し、対応策を共に練る。その後、3カ月かけてアクションプランを立案。平均2年程度かけて実行する。年内をめどに1号案件に着手する予定だ。ただし、自ら仕掛けることはせず、「販売先から相談を受けた場合のみ対応する」(同)。


金融機関との連携は想定せず、ファンドとの連携が中心になる見通し。事業承継の課題が解決すれば、山善とファンドが共同出資する予定の特別目的会社(SPC)に対象企業株式を譲渡するか、山善が完全子会社化する見通し。

日刊工業新聞(2019/6/6 05:00配信)より一部抜粋

抜粋内容からも「次期経営者が育っていない」という現状に、危機感を感じている一部上場企業が、取引先やパートナー企業を事業が継続可能な形にサポートする一つの案という意味では、こういうのもありか!と思いました。
記事の限りでいえば、相談のあった案件のみ対応ということで、無理強いはしないというニュアンスがあります。

今までの取引先にM&Aのような形で託せるのであれば、幸せな結末と言えるのかもしれません。ただ、記事のから感じられる山善の視点は、「BCP」寄りなのかな、と思いました。

BCP?

「BCP(事業継続計画)」という言葉も、経営者の方は耳にする機会が多いかと思います。ただ、その場合のBCP策定の想定は「災害などの非常時でのBPC」を指すことが多いです。
つまり、災害ひとくくりではなく、地震、台風、洪水などの各ケースに対して、防災面から事業か継続できるための計画を立てることを指します。今回の台風19号などの災害は、企業のBCPが試されるときでもあります。(個人的には、どのくらいの企業が策定したBCPを活かすことができたのか、興味がありますが。)

広義の意味でBCPは、「会社が緊急時に限られた経営資源を活かし、事業を継続させるための計画」という側面を持つものです。そう考えると、今回の山善の取り組みは、まさに、BCP!

このまま対策を立てなければ、せっかく築き上げたサプライチェーンが機能しなくなることへの深い懸念があるのだと思います。まさに、上場企業のサプライチェーンを支えている中小企業が、急に廃業してしまい、ポロポロとサプライチェーンから抜け落ちてしまったら・・・。

そうです!その事態が山善にとって緊急事態なのです。また、中核を担う、中小零細企業がM&Aをしてしまい、急に他社のグループ会社になってしまうなんてことも考えられます。ましてや、気が付いたら、ライバル会社のサプライチェーンの一部になってしまったりなど、あらゆるリスクが考えられます。

今まさに、何か策を練らなければ、山善の考えているBCPは、想定以上にダメージを負う可能性があると判断したのでしょう。
ただ、「支えてくれる中小企業にも考えがあると思うので」と一歩引いたニュアンスは感じられますが、将来的な見通しという観点で、山善の完全子会社化という未来図を描いています。

中小企業の手じまいに対して、有効な出口戦略のひとつとなるのか、興味深い方法です。今後も、じっくり見守っていきたいと思います。

消費税10%

消費税10%が始まりました

さあ、10月が始まりました。
ふと空を見ると、雲が高くて、信号を待ってる間でも、秋を感じるひとときになっています。

10月といえば、あれですよ。
そうです、とうとう消費税10%が始まりました。
システム障害が一部であったようですが、意外とスムーズな滑り出しな印象です。ただ、今回「軽減税率」が導入され、その導入に伴う混乱は続きそうです。

軽減税率が適用され、税率8%のものに「飲食料品」があります。
イートインでの利用の場合は、外食と同様の扱いになるため、10%となります。
スーパーのレジの周辺に、軽減税率に関する注意喚起の張り紙がが増えていました。きっとまだまだ、レジの張り紙は増えるのでしょう。

まんじゅう
「テイクアウトにします」 そう言うと税率8%!

消費税10%に伴う、商い現場の話

ちょっと前に知人との話の中で、『消費税10%になったら、「廃業の二文字を考えざるを得ない」という選択肢を想定してる中小企業がいる』という話を
聞いて、少しびっくりしました。
中小企業の中でも、宿泊・飲食業を含むサービス業では、深刻に影響があると察知していたのです。私個人としては、そういうものなのかな、と思う程度でした。

週末から下記のような記事がネットで流れててきました。こういうことなのかと思うと同時に、勝手に悔しい気持ちになりました。

10月1日の消費税引き上げを前に、軽減税率への対応が難しいとして廃業を決めた自営業者も出ている。
創業95年を超える大阪府内の老舗酒店は、得意先から100周年まで続けるよう励まされたものの、
多額の設備改修費の負担に耐えきれず、9月30日に店をたたむ。

毎日新聞web版 2019年9月29日更新 一部引用

次の記事も、事業承継をしてきた、現在4代目の商店の話でした。

 消費増税を翌日に控えた30日、長い歴史に幕を下ろす家族経営の店がある。
常連客に支えられてきた小さな店にとって、軽減税率などへの対応も含め、増税のコストはあまりに重かった。東京都目黒区で約100年続く酒屋「ますかわや本店」も30日に閉店する。店主の土橋彰さん(66)は4代目。
16年前にフランチャイズ傘下に入りながらも、地元の人とのつながりを大切に商売を続けてきた。
 年齢的に「あと2、3年」とは思ってはいた。閉店に踏み切ったのは、軽減税率対応のレジの導入に費用がかかり過ぎるからだ。在庫管理などをするパソコンの交換も必要になる。業者の見積もりでは、設備を一新すると、国の補助があっても300万円ほどかかることが判明した。リースにしても、6年間で約450万円かかる。
「仕組みが複雑で、2014年の増税時とは全然違う。あと2、3年なのに……」と妻博子さん(60)は声を落とす。
 閉店間際も地域のなじみの家を、1日30軒ほど回り、お酒やお茶を配達した。
「今までありがとうございます」とメッセージの添えられた花束も届いた。
「常連さんを裏切るような形になってしまって申し訳ない」と話していた彰さんは「たまらないよな。普通は売れ残るけど、完売。愛されていたんだね」としんみりした。

朝日新聞デジタル 2019年9月30日 一部引用

お客様に愛されていた商店が、どちらも、増税に対しての設備改修費がネックとなって、増税前の9月末で廃業したというニュースでした。

のしかかる設備投資

軽減税率の対応となれば、より複雑になる制度に対応したレジであったり、システムやパソコン刷新といった設備投資には、お金がかかります。
補助金の活用を検討しても、歯が立たない状況。普段から、お客様のために少しでも喜んでもらいたい、そして、お客様からの「ありがとう」。
それがあるから仕事は続けられるのだと思います。

この記事で気になったのが、補助金の活用は検討した、とありますから、税理士さんや商工会議所などのどこかに相談されたのだと思いました。ただ、あまりにも等身大のビジネス規模に対して、設備投資がかかりすぎるというケースで、皆、途方に暮れてしまった。その結果、「仕方がないね、廃業は」という選択肢になったのでしょうか。個人的に腑に落ちません。

制度が「商い」を潰してく

制度が「商い」を潰してく。苦労して商いをしていても、理不尽なルール変更やそれに対応するにはルール対応の機材を導入しなければならない。
便利になるには、コストがかかる・・・。このプロセスの中に、見落とされていること、そして、工夫の余地はなかったのかと思ってしまいました。

選択肢がふれるのか?

国は親族外への事業承継を推進 中小企業白書

今年に入り、国は「親族外への事業承継を推進」という方向性を示しました。

”政府は26日、2019年版の中小企業白書を閣議決定した。中小企業の経営者の親族以外への承継や、廃業時の経営資源の引き継ぎが重要だと強調した。経営者の高齢化と人口減少が進むなか、培ってきた技術や経営資源を若い世代につなぐ必要があるとした。

白書によると、経営者の半数以上が親族内で事業を引き継いでいる。M&A(合併・買収)などで親族以外が事業を継ぐことも推奨した。社内や親族に適任者がいなくても、外部で候補者を探せることがM&Aの利点だ。

やむを得ず廃業した場合でも、設備やノウハウ、顧客などの経営資源を起業家に譲り渡すことが有益だと訴えた。有償で引き継げば、旧経営者は廃業の費用の一部をまかなえる。起業家も円滑に事業を立ち上げることができる。”

日本経済新聞web版 2019年4月26日の記事より一部抜粋

中小企業白書を見ると、親族間での事業承継が、国のイメージしているスピード感で進んでいない危機感が垣間見れます。そのため、M&Aでの事業承継の推進を公に宣言して、大きく舵取りをした格好になっています。この流れをうけて、金融機関とM&Aをあっせんする企業との提携が増えていますね。

よくセミナーで、M&Aのような企業買収型の事業承継をネガティブに考えてしまう経営者も多いと聞きます。実際、お話をうかがう機会のなかで思うことは、経営者がM&Aの先のライフプラン「例えば、事業承継後の自分」をどう考えているのかで、イメージが別れてくるように思います。

ちなみに、国の政策の考え方を知ると、事業計画を考えるときに、時間軸を意識するようになります。近いうちに、中小企業白書を読むポイントも深掘りしたいと思います。


今日、電撃的に発表された「ヤフーがZOZOを買収」というニュース。買収も、事業承継も、タイミングだな、と改めて思った一日でした。

これからの中小企業の事業承継。どこを見て、事業承継を考えるかで見えるものは違います。山のてっぺんから俯瞰してみるのか、街の雑踏の中で瞑想するように考えてみるのか。選択肢の中には、新規事業を立ち上げる!というのも、これから増えてくるでしょう。